
泣かぬ鼠が身を焦がす
第18章 遠くなれば薄くなる?
次の日の朝、俺は朝一で静に連絡をした
予定を聞き、外での仕事なのを確認するとホテルの場所を伝えて迎えに来てもらう
車の中で静は俺を見て
「昨夜は会社におられなかったんですね」
と言った
「あぁ」
「何かございましたか?」
「……いや」
俺の何も答える気はない、という態度に静は小さく息を吐く
「ノラ様が、心配していらっしゃいましたよ」
「……」
今はその心配も、本物なのかわからなくなってんだよ
そう思いながら車の外を眺める
すると車は昨日純が知らない男と話していた駅を通りかかった
忌々しい思い出が定着してしまったそこを見ていると
「!!」
嘘だろ
また、駅には純と男の姿があった
隣の男は昨日見た男と同じ奴
笑い合いながら歩く姿に、俺は完全に打ちのめされる
運転手や静の目も憚らずに頭を抱えてしまいたくなった
くそ、どうすればいいんだよ
「本日はどうされたんですか、社長」
ある会議の帰りに、遂に静に窘められた
今日の俺は完全に仕事に身が入っていないからだろう
先方にもきっと不審に思われたに違いない
「いや、なーーー」
「なんでもなくないですよね」
「……」
静の強い視線に曝され、俺は黙る
