
泣かぬ鼠が身を焦がす
第19章 七転び八起き
足の着かない宙ぶらりんな状態で強く抱き締められて、少し怖い
「ちょっ、こわ……!」
俺が小さく抵抗するけど、拓真さんは離してくれない
なんか、小さいって馬鹿にされてるみたいでムカつくぞ
「はなぜ、よ……っ」
「嫌だ」
そう言った拓真さんは本当に俺を離してくれず、その上とんでもないことを口走った
「今すぐ純を抱きたい」
「! い、今……言うなよ」
「今すぐ抱きたいのに、後で言っても意味がないだろう?」
「……っ」
すげー上機嫌
嫌じゃないけど、なんか
恥ずかしい
気持ちになる
うぐぅ
暫くぐりぐり俺に顔を押し付けた拓真さんだったけど、下ろすときはあっさりと俺を下ろした
でも、地面に足が着いたことにほっとしたのも束の間で
「わぁ……っ」
今度はおんぶの状態で背負われる
「よし、早く帰ろう」
「歩けるよ! 下ろせ!」
「駄目だ。さっきベンチの上で気を失っていたのは誰だ」
「でもーーー」
「でもも何もない。いいから黙って背負われていろ」
有無を言わさぬ拓真さんの言いように、俺は「わかった」と言わざるを得なくなって
「……」
大人しく拓真さんの広い背中に耳を当てた
