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泣かぬ鼠が身を焦がす

第19章 七転び八起き


拓真さんがゆっくり歩く心地よい揺れに、少し眠気を誘われる


昨日寝てないし、泣き疲れたからかな
眠い

あったかいし


「ねー……拓真さん」
「なんだ?」
「どうやって俺のこと見つけたの?」


俺は眠気を紛らわすために、何となく気になってたことを聞いてみた


「どうやっても何も、勘と運としか言いようがないな」
「え、そんな適当な感じなの?」
「適当と言うな。誰かに頼るわけにもいかないし、走り回るしかないだろう」


走り回る……
言われてみれば、確かにスーツからちょっと汗の臭いがするかも

くさいとか、そういうんじゃないけど

むしろ
ちょっと……


「純、擽ったい」
「うわ、あ……ごめん」
「大人しくしてろ」


鼻を背中につけて臭いを嗅いでいたら拓真さんに窘められてしまった

俺はまた背中に耳を当てるだけにもどしたけど、意識すればそれでも尚香る拓真さんの汗の臭いにちょっと嬉しくなる


会社からここまで結構距離あったし
1発で見つかったわけないだろうし

本当に結構走り回ってくれたのかな


「ふふ……」
「? なんだ? 何かあったか?」
「何でもない……ふふ」
「変な奴だな」

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