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泣かぬ鼠が身を焦がす

第19章 七転び八起き


上機嫌に拓真さんの背中に擦り寄っていると、今度は拓真さんが話し始めた


「純……あの、な……」


言いにくそうな言い出しに、俺は嫌な話が始まるのかと少し身構える


「何?」
「昨日と、その前の2度、純と知らない男が駅で歩いているのを見たんだ」
「!」


見られてたんだ
全然気がつかなかった


「あいつは、一体誰なんだ?」


拓真さんの問いに、俺は正直に答える


「ヒトミさんの紹介で、キャンドルの作り方を教えてくれてた人だよ。1回目はキャンドルの中身買いに行ってて、2回目はラッピング買いに行ってた」
「なら、あいつと……その……」
「何?」


すげー言いづらそうな感じ
なんだよ


そう思っていた俺に、拓真さんは予想外の方向からパンチを食らわせた


「身体の関係があるわけではないんだよな?」
「っぶふ!」
「純!?」
「ゲホッ、ゲホ、ッホ……馬鹿じゃねーの!? あるわけないじゃん!」


馬鹿、なんて言われたのが心外だったのか、拓真さんは「馬鹿とはなんだ」と拗ね始める


いや、可愛いけどさ
俺の沽券にかかわるからちゃんと言お


「あの人はヒトミさんを好きなの! そもそもオカマだし! ネコだし! 俺とはどう頑張ったって無理じゃん!」

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