
泣かぬ鼠が身を焦がす
第19章 七転び八起き
俺の言いっぷりに、拓真さんも反撃してくる
「人の性観念なんて、見た目ではわからないだろうが」
いや、確かにそうだけど
俺だってびっくりしたけど
でも
「俺のこと、信用してくれてなかったってことじゃん…………ばか……」
疑われていた事実に心が萎れて、叩く代わりに拓真さんの背中に額をぶつけた
「……」
黙ったままの拓真さん
「拓真さんだって、帰ってきてくれなくなって、ご飯も一緒に食べてくれなくなって、泊まって帰ってきたと思ったら昨日と同じスーツ着てるし……俺のが不安になったのに……ばか……」
3度目の馬鹿に
2度目の頭突き
拓真さんはそれでも黙っている
「…………なんか言えよ」
俺が反応を催促すると、短く「悪い」と謝罪の言葉を口にした
けど、その声が妙に嬉しそう
俺の方からじゃ顔見えねー
「純、危ない。前見えないから」
「うるさい」
見えないから、俺は拓真さんの顔を手で触った
「何、笑ってんの」
「笑ってない」
「ふざけんな、笑ってるじゃん」
「笑ってない」の声すら笑ってる
てか、にやけてる?
なのに白を切ろうとかなんなの
