
泣かぬ鼠が身を焦がす
第1章 濡れ鼠
「どこか痛むところや寒かったり不都合のあるところはないか?」
「……」
全くありません
天国かと見間違うほどには快適です
とりあえず俺は首を横に振った
「そうか。悪いが多忙でな、定期的に様子を見に来させるが、俺自身が話を聞けるのは明日になりそうだ」
そんな、こんなとこで世話になってる場合じゃ……
あんたも見ず知らずの俺なんかに優しくする言われもないんだし
そんなことさせるなら、今すぐにでも出て行くよ
と言いたい気持ちはやまやまなんだけど身体は全く動かない
「それまではゆっくり休んでくれ。何かあったら物音を立てて人を呼べ。それじゃあまた明日」
「失礼します」
結局俺が何かを言えるようになる前に、2人は部屋を出て行ってしまった
あぁ、行っちゃった
にしても、社長のお家にお邪魔してるってことなのかな
こんなに広くて豪華なベッドやらがあるんだから、相当大きな会社の社長に違いない
うぅむ、羨ましい
「……ふ、は」
ふぁ、眠い
もーいーや
とりあえず寝よう
色んなことは後々考えることにしよう
寝まーす
おやすみっ
俺は柔らかい枕に頭を預けて、目を閉じた
はー幸せ
ここが天国で、俺が死んでればもっとよかったのに
