
泣かぬ鼠が身を焦がす
第1章 濡れ鼠
次に目が覚めた時には俺の腕からは管が生えていて、何やら液体を俺の腕に送り込んでいた
点滴ってやつ?
初めてやってもらったなー
こんなの、ドラマか映画の世界の話だと思ってたわ
すげー
感心しながら腕を眺めていると、喉もなんだか朝よりは調子が良いように感じる
声出るかも
「あー……ぁ、出た」
ちょっとガラガラしてるけど、十分話せるじゃん
やった
これでちゃんとお礼言って外出れる
なんて考えてたらドアが開いて、寝る前に会ったイケメン社長さんと女の人が入ってきた
「随分よく寝てたみたいだな。具合はどうだ?」
「大分良くなりました。ありがと。俺すぐにでも出てくから」
ほらほら、全然大丈夫
ちゃんと笑って喋れるくらいには回復したし
外出て早く新しい飼い主見つけないといけないしさ
女の人は俺の顔色を見て点滴を抜くとすぐに部屋を出て行った
後に残されたのは黙り込んだ社長さんと俺
「……」
「?」
大丈夫?この人
俺が喋ったことに驚いてんの?
それとも敬語もまともに使えないことに腹立ててんの?
俺が顔を覗き込むと、ハッとした社長さんが早口で捲したてるように言った
「家まで送ろう。住所を言いなさい」
「え?」
