
泣かぬ鼠が身を焦がす
第24章 鬼も仏も
そして俺を膝の上に乗せて抱きしめた
「……」
……これも、前からたまにやるよな
安心、する
けどさ
「俺にはお前がいると言ったが、違うな」
「違う、の?」
拓真さんが俺の耳に擦り寄ってきて擽ったい
「あぁ。俺にはお前しかいない、が正しいだろ」
「……っ」
なんだよ、それ
鼻がツンと痛い
「茜には、きっと他にもいい男が現れる」
「……拓真さんにだって、いい人がいるかもしれないじゃん」
「そんなわけないだろう。あんな出会い、これ以上ないほど運命的だ」
ぐずぐず言い訳を続ける俺に、それをひたすら否定し続ける拓真さん
「でも……」
「でももだってもない。茜が例え泣いたって、俺にはお前が欲しいんだよ。…………まだ異論があるのか?」
「……ない……」
反論を諦めると、拓真さんの俺を抱き締める腕の力が強くなった
全部包まれてるような
そんな感じ
「ねー拓真さん」
「なんだ?」
「もうすぐね、茜さんの誕生日なんだって。俺、プレゼント用意したい」
「プレゼント?」
「うん。俺のせいでって思ってたり、お詫びって思ってたりするわけじゃなくて……茜さんに、幸せになってもらいたいから」
