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泣かぬ鼠が身を焦がす

第24章 鬼も仏も


声の主は、俺が1番助けを求めていたその人


「拓真さん!!!」


道路の端に車を停めて降りてきてくれた拓真さんに駆け寄る


「何をしているんだ? こんなところで」
「はぁっ、はっ……っは……」


説明したいけど、息が上がって上手く話せない

そんな俺を見て拓真さんは非常事態だってことは理解してくれたらしく


「とりあえず、車に乗れ」


と俺を乗せてくれた


「ーーー!!!!」


そして車が出る直前に、外から人が叫ぶ声


母さんだ……!!


拓真さんは母さんの姿を見ただろうか

車の中は離れたところからの叫び声じゃ何を言ってるかまではわからなかったけど、こっちを見てたことぐらいはわかる


「ノラ、大丈夫か?」


俺の背中をずっと摩っていてくれた拓真さんが、呼吸が落ち着いてきたのを見て声を掛けてくれた


「……ん、大丈夫……ごめん、仕事中なのに」
「いや、これから戻るつもりだったからそれはいいんだが……」


拓真さんがチラ、と前を見る

伊藤さんと運転手さんの存在が気に掛かって、聞きたいことが聞けない感じ


やっぱり、母さんのこと見えたのかな

……母さん、なんであんなところにいたんだろ
今まで遭遇したことなんてなかったのに

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