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泣かぬ鼠が身を焦がす

第24章 鬼も仏も


こんだけ色んな人がいる都会でも、世間って狭いな


そう思って背凭れに寄り掛かり息を吐くと、伊藤さんがスケジュール帳をめくりながら


「社長、午後からの予定はいかがいたしますか?」


と拓真さんに聞いた


「あぁ、そうだなーーー」
「拓真さん、大丈夫だから。仕事行って来て」


俺は答えようとした拓真さんを遮って、仕事に行って欲しいと伝える


「……」


何か言いたそうな拓真さん
伊藤さんも、俺に何かあったことぐらいはわかるから安心できる言葉を待ってくれている


「大丈夫だから。拓真さんの仕事が終わったら全部話すよ。それに、すぐにどうこうなるようなことじゃないし」


そうだ
焦ったって、今の俺にはどうにも出来ない

そもそも、母さんが何の用だったのかもわからない


普通に久しぶりに会った挨拶

ってことは、ないだろうけど


俺の言葉を拓真さんは少し考えていたけど、信用してくれたらしく


「わかった。静、予定通りで構わない」


と言ってくれた

その対応に、俺は胸をなでおろす


良かった

あとは帰ってから何て説明するか考えなきゃ
つっても、拓真さんは全部知ってるんだし心配はしてないけど

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