
泣かぬ鼠が身を焦がす
第24章 鬼も仏も
俺はそのまま会社まで送ってもらって、いつもの部屋で拓真さんが帰ってくるのを待った
「ただいま」
「!」
大体いつもと同じくらいの時間
拓真さんが部屋に入ってきて、夕食をテーブルに置く
「おかえり」
「あぁ」
俺の言葉に返事をした拓真さんは、夕食を囲んでいる椅子
ではなく、ソファに座った
「純、ここへ」
拓真さんがその隣をぽんぽん、と手で叩く
俺は大人しくその指示に従って拓真さんの隣の空いているところに座った
「話してくれるな?」
「……うん……」
別に、拓真さんにやましい事があるわけじゃない
でも
少しだけ緊張
「……今日、言ってた通り駅ビルで茜さんの誕生日プレゼント見てたんだけど、あんまりいいのがなかったから隣のビルに移動しようって思って駅ビルを出たんだ」
拓真さんの口から俺が行こうとしてたビルの名前が出てきた
「あ、そう。そこ」
「あそこか……」
考えを巡らせるように目線を逸らした拓真さんは多分建物の位置関係を頭の中で確認しているんだろう
「あそこだと駅ビルからなら歩いて数分だな」
「うん。宣伝のポスターが貼ってあったから、気になって行こうと思ったんだけど……」
