
泣かぬ鼠が身を焦がす
第24章 鬼も仏も
逸らしていた目が動いて、また拓真さんと目が合う
「けど?」
「途中で…………母さん、に……会って……」
「!!」
明らかに驚いた反応
そりゃそうか
俺だって驚いたもんな
「何故あんなところに? 首相官邸から決して近くないぞ」
「俺もわかんない。けど、突然後ろから腕を掴まれて……振り返ったら、母さんだった」
あの時の事が頭の中でプレイバックする
忘れもしない
俺の生みの親
あの人の顔を最後に見たのは……
俺の気分が落ちたのがわかったらしく、拓真さんが背中を摩ってくれる
「それで、何か言おうとしてたんだけど……俺、なんでか……逃げちゃって……しかも、適当に走り出したから場所もよくわかんなくなって、ヒトミさんとこにどうやって行ったらいいかもわかんなくて……」
拓真さんが納得したように
「それであんなに外れたところにいたのか」
と呟いた
「純が車に乗った時、後ろで叫んでいた人がいたな。もしかしてあの人が?」
あの叫び声聞こえてたんだ
やっぱり
俺は深く俯いて肯定の意味を示した
「そうか……」
また拓真さんが考えるような素振りをする
