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泣かぬ鼠が身を焦がす

第24章 鬼も仏も


そして、顔を上げた拓真さんが


「明日から、外には出ないようにな」


と言った


当たり前か
俺が遠出して駅ビルにいたなんて考えられないし、俺の生活圏内ってことばバレたよね……


くそ、と考えている俺の頭に、拓真さんの手が乗る


「……なに?」
「茜の誕生日プレゼントは通販で取り寄せればいいだろ? 本物を手に取って見ることは出来ないが、買いに行くより格段に種類も選べる」


俺がそれで落ち込んでると思ったの?

確かに茜さんの誕生日プレゼント買いに行けないのは嫌だけど、1番嫌だったのは拓真さんに迷惑かけることだったのに


ちょっとした驚きで暫く固まった俺に、拓真さんは「パソコンは明日持って来させる」と付け足す

その様子が可愛くて、俺はつい笑ってしまった


「ありがと」
「何を笑っているんだ?」
「笑ってないよ」
「笑ってるだろ」
「笑ってない」


笑ってる、笑ってない、の言い合いを続けて、馬鹿みたいってやめる


「……迷惑、かからないといいな……」


そして最後に呟いた俺の言葉に、拓真さんは俺にデコピンをかまして


「迷惑ぐらい、いくらでもかけろ」


と言って立ち上がった


「飯食うぞ」
「……うん!」

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