テキストサイズ

泣かぬ鼠が身を焦がす

第24章 鬼も仏も


嬉しそうに話す茜さんと反して、俺の心は氷点下まで温度が下がっていった


「いつ、視察に来るって連絡が来たの……?」
「それが今日の朝突然なの! 何か急ぐ用事があったのかなぁ?」


んー、と考え始める茜さんに


突然……


違う意味で考え込む俺

暫く沈黙が流れると、茜さんは「ま、考えても仕方ないか」という結末に至ったらしく


「じゃあ、私仕事増えちゃったからもう行くね」


と去っていった


「うん。またね」
「じゃあね〜」


明らかに不自然だよな
総理大臣なんて立場の人がそんな急なスケジュールを入れるわけない

もしかしてあの時
母さんは拓真さんのことを見た……?
いや、車のナンバーか?

どっちにしても、俺のことを追ってきてる


カタ、と手が震えた


普通の視察なら、社長のプライベートルームまで見にくるとこはない

だから、俺と会うなんて絶対にあり得ない


でも


「…………」


俺を追ってくるなら、理由は絶対にあれだ

あの、忌まわしい過去


あれは確かに犯罪で
証拠がなくたって総理大臣にとってはマイナス要素以外の何物でもない

しかも証拠は
探せばなくもない

ストーリーメニュー

TOPTOPへ