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泣かぬ鼠が身を焦がす

第24章 鬼も仏も


俺の名前を呼びながら扉を開けた、その体勢のままで固まっている拓真さん


最低、だ



どうしよ
どうしたらいい?


頭も顔もきっとぐちゃぐちゃで
枕から出た綿でベッドの上は散々


ここのものは
俺も含めて

俺のものじゃないのに

迷惑

かけて


「ごめ……なさ……い……」


気がつくと、俺の口からは謝罪の言葉が溢れていた

すると拓真さんは、黙ったまま歩いて俺のところに来て


「……」


ぎゅう、と強く抱き締めてくれた


「たくまさ……ごめんなさい……」
「いいから」


頭を撫でられて顔を上げると、顔中にキスが降ってくる


「泣くな」


目元にキスされて、涙を吸われた


「だって……俺、ここにいられなく、なっ……でも、迷惑……かけ……ぅぅ……」


ぐずぐずになった声で拓真さんに本音を告げる

拓真さんは強い力で俺を抱き締めたままひたすら「大丈夫」を繰り返し言った


「俺がお前を守るから。何も心配しなくて良い」
「でも……」


尚も言い募ろうとする俺を遮って、拓真さんは俺の後頭部を掴んで顔を胸に埋めさせる

何も言えなくなった俺は、暫くそのまま泣き続けた

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