
泣かぬ鼠が身を焦がす
第25章 合縁奇縁
1週間ってのは意外と一瞬で、刻々と迫ってくるその時に向けて俺は特に何の準備も出来なかった
ただいつもと変わらず毎日を過ごして
たまに不安になっては考えないようにしようって努力する
そんなことを繰り返し
茜さんの誕生日
兼
内閣総理大臣視察の日
はやってきた
朝から緊張した面持ちの拓真さんと俺は特に会話もなく食事を終えて、出勤の支度をする拓真さんを見守った
「今日の昼食は茜は来れないからな」
「あぁ、うん……忙しいだろうし」
「違う人間に運ばせる。プレゼントは夕方、退勤前に呼んでやるからその時に渡してやれ」
「……うん」
茜さんの誕生日プレゼントは既に通販で購入してあって、部屋の少しわかりにくいところに隠してある
けど今は、そのプレゼント喜んでもらえるかなって不安よりも渡せるかなって不安の方が大きい
「純、今日は絶対にここにいろよ」
「わかってる。クローゼットの中に隠れてるから」
「……本来なら、ここで隠れる必要なんてないんだがな」
「……」
拓真さんはネクタイをきゅ、と締め直して細く息を吐いた
「……行ってくる」
「行ってらっしゃい。……」
気をつけてね、はおかしいよね
何か言いたいのに、何て言えばいいのかわかんないや
