
泣かぬ鼠が身を焦がす
第25章 合縁奇縁
結構くまなく探してる感ある……かも
やばい……
トイレやお風呂の扉を開いて閉じる音がする
そしてついに足音が俺の隠れているところの前で止まって
や、ば……い
クローゼットの扉が開いた
自分の鼻息すらうるさいような気がして息を止める
家探ししていたその人が中まで歩いて入ってきた
絶対見つかる!!!!
嫌だ!!!
そう思った次の瞬間
「!!!」
部屋の社長室に通じる扉が勢いよく開いた
「ここで何をなさっているんですか!? ここは社長のプラベートルームですよ!?」
部屋中に響く怒りの声は、伊藤さんの声
急いで来てくれたのか、少し息が切れている
「そうだったんですか。すみません、気がつかなくて」
「気がつかない? そんなわけありませんよね。不法侵入で警察を呼びますよ」
「そんなに怒らないで下さいよ」
飄々とした話し方で伊藤さんの怒りを流すのは、男の声
「早く戻って下さい。こちらは視察の対象外です」「そんなに怒らなくてもいいじゃないですか」
「……次はありませんよ。2度めには躊躇いなく警察に通報します」
伊藤さんの厳しい声に男がクローゼットから出て行った
あ、危なかった……
