
泣かぬ鼠が身を焦がす
第4章 隠した爪に刺される
俺杉田さんに何か嫌われることしただろうか
まだちょっとダルい腰を労いつつ、ベッドの上で問題集を解く
テレビもないところで過ごして暇で仕方なかったのに比べたら、随分暇は紛れるかもしれないな
お昼ご飯は仕事で忙しいらしい茜さんの代わりに知らない女の人が届けに来て
「ありがとうございます」
「い、いえ……」
気まずそうに去っていった
いいよいいよ
そんな明らかに嫌悪的な目を向けてくれなくても
慣れてるもーん
サンドイッチを口の中に放り込みながら問題集を続ける
しかし分厚いね
1教科につき3センチ!
がんばろ
気がついたら俺は眠っていて、部屋に充満するご飯の匂いで目が覚めた
「あ、かねさん……?」
小さな声で名前を呼ぶとベッドが軋む
「起きたか?」
「ふぇ……?すぎたさん?」
「よだれ。出てるぞ」
口元を何かで拭われて閉じかけの目を開くと、目の前には杉田さんの顔があった
あれ?
夜まで接待じゃなかったっけ?
「いまなんじ?」
「もう夜中だ。寝すぎだろう」
うそ
俺が枕にしていた問題集をちらっと見て杉田さんが笑う
「のび太か」
