
泣かぬ鼠が身を焦がす
第26章 嘘八百
俺の視線に気がつくと焦ったように弁明した
「あっ……申し訳ございません。大臣からの言いつけで、部屋にいる時以外は目を離してはいけない決まりなんです」
じゃあトイレとかは遠慮なく行っていいってこと?
でも昨日の風呂は急かされたよなあ
「それって門限あります? 昨日お風呂入って戻ったら別の人に急かされたんですけど……」
「はい。お風呂は時間が決まっています。お手洗いについては呼んで頂く形になりますが、あまり夜遅くになりますと私たちも就寝してしまい、気づけないことがあります」
「なるほど……」
住み込みなんだ、この人たち
俺は不審がられないようににこっ、と笑う
「そうなんですか。手間かけてごめんなさい、ありがとうございます」
「そ、そんな……っ、お仕事です、から……」
うぅん、若い女の人だし
多少は扱いやすそうかも
俺は1人でトイレに入った
トレイから脱出するのは……あんまり現実的じゃないな
窓は小さくて外に出るにはなかなか苦労しそうだし、常に外に外に人がいるから不審な音たてられない
じゃあこれまでの情報からして、夜か
問題はあの人が夜になると帰ってきちゃいそうってことだな
