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泣かぬ鼠が身を焦がす

第1章 濡れ鼠


いやいやいや
何言ってんのこの人


無表情な顔からは何も伺えない


「いや、別に俺もう平気だし、立派な二本の脚がついてるから」
「車の方が速いだろう」
「いやでも、悪いし」
「なにも遠慮するな。これでまた外で倒れられていた方が寝覚めが悪い」


はぁ? 何その言い方
別に外でのたれ死んだってあんたのせいにしないっつーの!

俺の身元を引き受ける人間なんかいねーから誰のせいとかもねーよ


随分な物言いにむっとして言い返してやろうと思ったけど、俺が何か言う前に遮るかの如く部屋に電子音が響いた


「失礼。もしもしーーあぁ。それは…………」


音の正体は携帯電話だったらしくて、社長さんはかかってきた電話に出てしまう


チッ
なんだよ


「わかった。また後で。ーー時間がない。早くしてくれ。送ってやると言ってるんだから素直に甘えればいいだろう」


結局電話を切っても俺の話をまともに聞く様子もない社長さんは俺を急かすように言う


はぁ!?
話が終わるの待ってやったのになんだよ!?


「俺、別にいいって言ってんじゃん!!」
「はぁ……さっきも言ったが、うちの名前を穢されるようなことをされては困る。病み上がりで、途中で倒れたらどうするんだ」

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