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泣かぬ鼠が身を焦がす

第5章 猫の前の


伊藤さんが発したのは


「すみません、社長……」


ってそれだけだった


「すみませんじゃないだろう。俺は謝罪を要求しているのではなく、説明を求めているんだが?」
「……」


それでも尚、黙ったままの伊藤さん


そんなに言えない理由があった?
俺が気に入らないとか?
前のとこでもあったなそんなこと


「……」
「……」


でも、続く杉田さんからの無言の重圧に押し負けたのか、暫くすると重い口をゆっくりと開いた


「ーーーれしーーーーー……」


声ちっちゃ……!!!
聞こえねえ ー


「なんだ?聞こえない」
「……っ」


そして、杉田さんに追求された伊藤さんはやけくそのように大きな声で驚くことを言った


「ノラ様に、一目惚れをしてしまったんです……!!!」
「は?」
「へ?」


ヒトメボレ?
お米の品種だっけ?


「どういうことだ?」
「……社長がノラ様を連れて帰られたあの日、ベッドで眠るノラ様を見て驚いたんです。こんなに綺麗な人が世の中にいるのかと」


んん?
綺麗な?

上白米…………いやいや、そろそろボケてる場合じゃない


「……それなのにこんなに無邪気で、可愛らしくて……厭らしくて……」

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