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泣かぬ鼠が身を焦がす

第30章 歩く足には


「懐いてねーよ!」


拓真さんに半ば叫ぶように言うと、狭いエレベーターの室内に音が反響して想像より大きい声になった


やば
いやでも拓真さんが悪い……!!!

いきなりあんなこと言うなんて
意味わかんねー

……
嬉しい……けど、さぁ……


拓真さんからの視線を後頭部に感じつつも俺は俯いて顔を上げない

それから特に何を言われるでもなく社長室のある階に到着した

拓真さんがエレベーターの中から先に出るのをまっていると俺の頭にぽん、と手を置かれて、その後すぐにエレベーターから降りて行った


……なんだよ


俺は拓真さんに触られたところを自分の手で抑えながら続いてエレベーターから出た


そして久しぶりの社長室に入り、更に拓真さんの仮眠室へ

その頃には拓真さんに嫉妬されたことなんて頭から吹っ飛んでて


な、懐かしい……!!!!
俺の城!!!!


全然全く俺のじゃないんだけどなんとなくそんなことを考えながら小走りで入る


「懐かしいか?」
「うん!! もうここが俺の家って感じ!!!」


あーー……
このベッドも懐かしい

飛び込みたい……


拓真さんが仕事に行こうとしてるのに明らかに寛ぐ体勢になるのもどうかと思ってぐっと我慢する

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