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泣かぬ鼠が身を焦がす

第30章 歩く足には


そしたら、部屋の扉をノックされた


「なんだ?」


と拓真さんが声をかけると


「ノラ様にご挨拶よろしいでしょうか」


外から茜さんの声が聞こえて来た

もし俺に耳があったらピンッと立つぐらい嬉しくなって、部屋の奥まで走って行っていた俺はまた走って入り口の近くに戻る


「入っていい」
「失礼します」


畏まった態度で扉が開くと、やっぱりそこには茜さんがいた


「茜さん!!!!」
「ノラーー!!! おかえり!!!」


さっきまでの態度はどこへやら、茜さんは喜んで俺に走り寄って来て強く抱き締めてくれた


うわぁぁぁぁぁ
こんなに喜びを全身で表現してくれるの茜さんぐらいだよぉぉぉ


「寂しかったよノラ〜」
「俺もだよ茜さん」


抱き合ったまま何故かぐるぐる回る

拓真さんから見たら小動物が戯れてるようにしか見えないだろうな


「良かった……もう会えないかと思っ……うぅ……」


俺が拓真さんの方に気を取られてる間に茜さんは涙ぐんでて、びっくりしながら宥める


あ、そういえば


「ちょっとごめん」


俺はぐずってる茜さんから離れて部屋の隅っこに行く

そしてそこから、遥か昔(に感じる)に頼んだ茜さんの誕生日プレゼントを持って来た

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