
泣かぬ鼠が身を焦がす
第31章 秋風
わぁぁぁぁ!?!?
やばい!!! それはダメ!!!
「待って待って!!!」
「?」
うわ、大きい声出すのも痛いって相当だな
そんな風に思いながら俺は俺の服の裾を掴んでいた拓真さんの手をゆっくり外す
「大丈夫だから」
「見るだけだから、そんなに警戒しなくていい」
見るだけなのがやばいんだよ、ねぇ
もう1度俺の服を捲り上げようとする拓真さんを俺は必死で止める
「何にもなってないってば。違うんだよ」
えー……っと
あの、あれだ
「ちょっとお腹の調子が悪くて、便秘気味だから押されると痛かったの」
また俺はくだらない言い訳をしてる
そう自覚はあるけど、どうしても自分の腹回りの脂肪がとは言えない
拓真さんは俺の苦し紛れの言い訳に心配そうな顔をする
「そうだったのか。気がついてやれなくて悪かった。そこまで酷いなら便秘薬を持ってこようか?」
「え、と……うん、じゃあお願い」
「わかった。待ってろ」
そう言うと拓真さんは渋る様子もなくすんなりとベッドから立ち上がって部屋を出て行った
部屋には救急箱みたいなのも薬が置いてあるところもないし、社長室か秘書室まで取りに行ったんだろう
