
泣かぬ鼠が身を焦がす
第32章 愛してその醜を忘るる
拓真さんは俺にさっきの仕返し、というようなキスをした
最初のキスは触れるだけで離れる
けど、すぐにまた唇を合わせて
今度は触れるだけじゃなくて少しだけ吸うみたいに
何度も何度もキスをして
少しずつ深めていく
でも本気でシたらすぐまたスイッチ入っちゃうから、ただ心を満たすだけみたいに心地いいってレベルのキスを続けた
暫くしてキスを終えると、離れていた身体を合わせるみたいにきゅう、と拓真さんに抱き締められた
俺の心臓もきゅん、と締まった音がする
幸せな気持ちで満たされて、俺の心が穏やかになったついでに
言っちゃおうかな
という気持ちが湧いて出てくる
すると、拓真さんが抱き締める腕の力を緩めた
「?」
「悪い。苦しくなかったか?」
なに、突然
「別に大丈夫だよ」
俺の答えに拓真さんは俺の顔にかかった髪を避けながら「そうか」と言った
「治った、と言っていたな。悪い、気にしすぎてるのかもしれない」
俺のお腹が調子悪いのがそんなに気になるか
別に拓真さんが痛いわけじゃないんだし
それに治ったって言ったのに、まだ心配なの?
疑問に思って、聞いてみる
