
泣かぬ鼠が身を焦がす
第32章 愛してその醜を忘るる
「拓真さん」
「なんだ?」
緊張する
一瞬前まで言わなきゃって気持ちでいっぱいだったのに、もう諦めたい気持ちになってる
いやでもだめだ!
大丈夫
大丈夫
「俺、拓真さんに嘘吐いてたことがあるんだ」
突然の告白に拓真さんは一瞬固まった
そして
「嘘……?」
俺の言葉を反芻する
「あの、ね……俺、お腹の調子が悪いって言うの、嘘……だったんだ……」
「……」
拓真さん、何にも言わない
怒ってるかな
「……」
その雰囲気があまりにも怖くて、俺は続きを言えなくなってしまった
けど、今度は拓真さんが俺に続きを急かすように
「何故そんな嘘を吐いたんだ?」
と聞いてくる
「……下らない理由なんだけど、俺……拓真さんのとこに戻ってきてからすごい太っちゃったみたいで…………それで、その……」
なんて言えばいいんだろ
なんて言えばいいのか、考えれば考えるほど自分が嘘を吐いてた理由が馬鹿馬鹿しくて
俺ほんと、ダメな奴
あまりの落ち込みぶりに俺がそのまま黙ってしまうと、拓真さんは俺を強く抱き締めた
それはもう苦しいぐらい
「?」
なんで?
