
泣かぬ鼠が身を焦がす
第32章 愛してその醜を忘るる
「拓真さんの作ってくれたご飯、ちゃんと食べなくてごめんなさい」
俺がほっとしたついでにそう言うと、拓真さんは腕の力を緩めた
顔を上げると拓真さんと目が合う
夜目にも大分慣れて、拓真さんの顔くっきり見える
「明日からは普通に作ってきていいのか?」
「うん。美味しいものいっぱい食べたい」
「わかった。じゃあ、明日は痩せた記念に朝から純の好きなものを作ろうか」
やった
……
「朝から?」
拓真さんの言葉の端が気になってそう聞くと、拓真さんは当然のように
「朝から」
と繰り返した
「言わなかったか。明日からは 久しぶりの休みなんだ」
「へーそうなんだ」
……
「明日、から?」
今度はまた別のところがひっかかって、俺はまたさっきと同じようにたずねる
「あぁ。社員用の連休が明日からあって、5日間休み」
「5日も!? すごいね」
「社員の慰安旅行を2泊3日で部署ごとに計画させてるんだが、帰ってきてすぐに仕事じゃ余計に疲れるだろう。そのために長く取ってある」
「じゃあ、会社全部休み?」
「そうだな」
すごい思い切ったことするな
「取引先にも伝えてあるから、本当に5日は何もない」
