
泣かぬ鼠が身を焦がす
第32章 愛してその醜を忘るる
すごいすごい
じゃあ結構長く休みじゃん
って、でも
「拓真さんは行かなくていいの? 慰安旅行」
そしたら俺、1人でお留守番じゃん
ちょっとだけ寂しく思ってると、拓真さんが笑った
「社長の俺がついて行って癒される部署なんて、あるわけないだろう」
そんなことないよ
きっと、どこと一緒に行くってなってもみんな喜ぶよ
主に秘書課の人だけだけど、俺が見てきた社員さんたちはみんは拓真さんのこと大好きだったもん
なんて
そんなこと言って拓真さんが本当に誰かとどこかに旅行に行っちゃったら嫌だから言わないけど
だから俺は
「確かにそうだね」
なんて、意地悪な相槌を打った
すると拓真さんはそんなこと気にもしない様子で驚くようなことを言った
「だから純は、俺と旅行な」
「え、2人で?」
「あぁ」
「どこに?」
「内緒」
と、そこで拓真さんは大きな欠伸をする
疲れてたのかな
ここ数週間は働き詰めだったし
「……続き、明日でいいや。眠いから、寝よ」
俺がそう言うと拓真さんは納得したように目を閉じた
「おやすみ、拓真さん」
「あぁ……おやすみ……」
うとうとした声を最後に眠りに落ちた拓真さんを暫く眺めて、俺も目を閉じた
