
泣かぬ鼠が身を焦がす
第33章 能ある鷹も身を焦がす(サイドストーリー2)
それから、会社の下で車に乗り込み私達はその場を後にしました
出発する際の三村様は、私に渡した何かなどなかったかのように自然体で
それなのに私の動揺は収まらないまま
終業まではまだ時間があります
その間にまた前のような醜態を晒し、社長に失望されないようにしなくては……
私は車の中でとにかく次や明日のスケジュールを考えて心を落ち着けました
そして
「今日は帰っていい」
と社長から言われたのは定時の終業時間が過ぎてから少ししてからでした
当然、前回と同じ轍を踏むことはなく仕事は完璧だったと思います
なので社長の言葉の意味はただ単にその日の仕事が終わった、ということです
「はい。お疲れ様でした。失礼致します」
「あぁ。お疲れ」
いつもの通り社長が仮眠室に戻っていかれ、それを見送ってから私も社長室を後にしました
私が秘書課の部屋に入ると、他の社員も帰り支度を終えたようで
「伊藤さんも終わりですか? お先に失礼します」
と言って帰って行きます
「お疲れ様でした」
私も社員たちに声を掛けながら帰り支度を進めましたが、最後の1人が部屋からいなくなった時手を止めました
