テキストサイズ

泣かぬ鼠が身を焦がす

第33章 能ある鷹も身を焦がす(サイドストーリー2)


ただの取引先の方からの伝言というだけなのに自分が1人になるのを見計らっているなんて、自分でも恥ずかしいです

ですが期待しているのか警戒しているのかで早まっている鼓動を、動揺を人に悟られるのはどうにも憚られたのです


今まで全く触れもしなかったスーツのポケットに手を伸ばします

ゆっくりと中に手を入れると、指先が触れた紙のようなものがカサ、と小さな音を立てました


やっぱり、紙でしたか


口の中に溜まっていた唾液を飲み込んで、肺の中の息を短く吐き出してからその何かを取り出します

指先に摘まれて出てきたそれは、小さなメモ用紙を四つ折りにしたもの


「……」


それを開くと


『来るまで待っています』


というメッセージと、聞いた覚えのある公園の名前が書いてありました


どういう意味なのでしょうか

前回投げられたことへの復讐をしたい?
それとも、突然押し倒そうとしたことへの謝罪がしたい?

そのどちらも、この短い文面からは読み取れません


ですが無視するべき、ですよね

お酒に入れられた薬や
真剣に告白をしたかと思ったら無理やり押し倒して来たこと

2度も裏切られて、馬鹿正直に呼び出されたところに出向くなんて

ストーリーメニュー

TOPTOPへ