
泣かぬ鼠が身を焦がす
第33章 能ある鷹も身を焦がす(サイドストーリー2)
そう思っていた
確かにそう思っていたはずなんです
ですが、私の足は気づくと指定された公園に向かって歩いていました
「……」
自分のあまりに馬鹿な行動につい大きくため息を吐きます
そして公園の敷地に足を踏み入れると、すぐに
「伊藤さん!」
少し離れたところから三村様の声がして、小走りで駆け寄ってくる足音がしました
私がそちらに視線を向けると、三村様は心底嬉しそうな顔をしていらっしゃいます
「?」
昼間にお会いした時とも、前回このようにプライベートでお会いした時とも雰囲気が違いますね
なんと言いますか
主人を見つけた犬のような
しかしそのような三村様を見られたのは一瞬で、すぐに三村様は少し気まずそうな表情に変わられました
「あの、こんなところにお呼びしてすみませんでした」
「……いえ。ですが、このようなことはもう2度とないようにして頂きたいです」
以前も思いましたが、このような男性が耳を垂らした犬のような顔をしているというのは変な感じがしますね
犬……
さっきもそう思ったような
「立ち話もなんなので、こっちへ……」
私の思考を遮るようにそう言った三村様が指したのは公園の奥
