
泣かぬ鼠が身を焦がす
第5章 猫の前の
「はい。そのように言って頂けるなんて、お優しいですね」
「あははっ……優しくないよ。普通普通」
なんか、伊藤さんの雰囲気柔らかくなったな
社長の目を盗むのとか、やっぱり色々悩んでたんだろうか
「本日の社長のご予定ですがーー……」
そして、いつもの通り社長の予定を話し始めた伊藤さん
あれ、なんか仕事終わるの早いな?
「なんでそんな仕事終わるの早いわけ?」
「社長のご希望です。理由は伺ってませんが」
「そう」
なんかプライベートでの用事かな?
となると今日はこっち来ないとかあり得るなー……
約束……いや、今日はちょっと気まずいし顔合わせなくて良かったかも
とか思ってたんだけど
普通の会社が定時って言うくらいの時間に、俺の部屋の扉は開いた
「茜さん? 早くな……い!? って杉田さん!?」
「あいつのこと茜さんって呼んでんのか」
「ちゃんと許可とったし……ってなんで?早くない?」
うわわわわ
顔合わせたくないって思ってたのに
「お前との約束を守りに来たんだよ」
「わざわざ仕事こんな早くに終わらせて!?」
「悪いか?」
「悪くは……ないけど……」
なんで俺なんかとの約束にそこまでするわけ?
