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泣かぬ鼠が身を焦がす

第33章 能ある鷹も身を焦がす(サイドストーリー2)


インターフォンが鳴ったのは私が帰宅してから1時間が経った頃です


「はい」


受話器で応じると、モニターに映った三村が私の声に嬉しそうに顔を上げました


『俺です』
「ふふ、新手の詐欺のようですね。どうぞ。家の鍵は開いているので入って来てください」


エントランスのオートロックを解除するボタンを押しそう伝えると、元気の良い返事がしてモニターから三村が消えました

私はキッチンへ行き、三村の分と自分の分のお茶を淹れます

少しすると小さな音と共に扉が開き、リビングに三村が入って来ました


「お疲れ様です。今お茶を持って行きますので、ソファにかけていてください」
「は、はい。ありがとうございます」


いつまで経っても緊張した感じは解けませんね
それがまた可愛らしいのですが


私はカップに入れた温かいお茶に、手元に隠してあった白い粉を入れました

そしてそれをスプーンで掻き混ぜて溶かしてから三村の元へ運びます


「どうぞ」
「ありがとうございます」
「いえ」


私が隣に座ってお茶を飲み始めると、それを見た三村もお茶に口をつけました


素直で、いい子ですね


「そういえば、後ろに入れたのはそのままになっていますか?」

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