
泣かぬ鼠が身を焦がす
第34章 旅は道連れ
うぇぇぇぇぇぁぁあ!?
怒ってる……!?
怒ってるよな……!!!
と思ったのも束の間
次の瞬間には俺の身体は拓真さんの胸の中に閉じ込められていた
「!!」
「触られただけでも十分腹だたしいが……何もなくて良かった」
え、と……
怒って、ない……?
「悪かった。すぐに助けてやれなくて」
怒ってないどころかむしろ謝られてしまって、俺は首を横に振った
「俺こそ……ごめんなさい……拓真さん、人と喋ってたのに……」
俺がそう言うと、俺の頭を撫で始めた拓真さんが少しだけ険しい顔をした
「だから離れていたのか。人を連れているから、と言えば早くあそこから抜けられたものを……」
「まったく……」と機嫌を悪くした様子の拓真さんに焦る
「だ、って……どこぞの社長令嬢とかだったらどうすんだよ……機嫌損ねて会社に……とか……痛っ」
言い訳をすると、拓真さんは俺の額に軽いデコピンを食らわせた
「例え機嫌を損ねたとしても、それぐらいで俺の会社がどうこうなるわけないだろう。……それに、せっかくの2人旅行だっていうのに純が離れている方が嫌だ」
「……」
せっかくの、とか
嫌だ、とか
ちょっと子供みたいな事を言う拓真さんに呆然としてしまう
