
泣かぬ鼠が身を焦がす
第34章 旅は道連れ
暖かい室内から出て来たばっかりでも寒く感じる中、簡易的に設置されてた脱衣用の箱に着ていた服を入れて湯船に浸かった
「はーー……」
ちょっと熱いかも、と思ったけど外が寒いから丁度いいや
気持ちいい
正方形の湯船で隣り合うように座った拓真さんも同じように息を吐いている
その溜め息は疲労感から?
それともただ単に俺と同じようにお風呂の気持ち良さで出たやつ?
「夕陽綺麗だな」
変な勘繰りを続ける俺に、拓真さんがそう声をかけてきた
その声につられて目線を前に向けると、眼下に広がる海に丁度太陽が沈む所
「ほんとだ……すげー……」
オレンジ色に輝く太陽と、それに反射してキラキラ光る海の綺麗さに上手い表現が見つからずアホみたいな感想しか出てこない
けどそんな俺を気にする様子もなく拓真さんは俺を引き寄せる
「?」
拓真さんはお湯に浸かってるせいで重力が軽減された俺を軽々と持ち上げて、自分の足の間に
そして後ろからぎゅう、と抱き締めた
そこでまた拓真さんの口から溜め息が溢れる
「はぁ……」
「……」
今度のは疲れてるから出たやつなんじゃないのかな
