
泣かぬ鼠が身を焦がす
第34章 旅は道連れ
でも泣いたぐらいじゃ気を失うまではいかなくて、思考の鈍くなった頭で俺は拓真さんの名前を呼んだ
「……拓真さん……拓真、さん……たく……っふ……ゔぅぅ……」
名前を呼びながら俺の手は自然と前に伸びていて、拓真さんはそれに応えるように俺を抱き締めてくれる
「たくま、さ……たく、さ……っ」
拓真さんも着ていた俺と同じ浴衣に顔を押し付けられて、その匂いに少しだけ気持ちが落ち着いてきた
すると俺の口から今度は謝罪の言葉ばかりがついて出てきた
「たくま、さん……、ごめんなさい……ごめんなさい……ごめ……なさ」
拓真さんは尚も俺の頭を撫で続けていて
「大丈夫だ。大丈夫。な?」
穏やかな声音で俺にそう囁いてくれた
数分……いや、もしかしたら数十分ぐらい長い時間俺は拓真さんに撫でられながらそうしていて、気がついたら泣き疲れからかまた眠っていた
そして、今日三度目の眠りから覚めた俺は今度は拓真さんの腕の中にいた
「起きたか?」
一緒に寝てるかと思ってた拓真さんは起きていたらしくて、俺の髪に口付けながらゆっくりと背中を摩ってくれた
「……うん……」
泣いてしまった気まずさで、俺は小さな返事だけ返す
