
泣かぬ鼠が身を焦がす
第34章 旅は道連れ
少しすると部屋の扉がノックされて、外から女性の声がした
「お食事お持ちしました」
「お願いします」
拓真さんが対応して、女性の仲居さん数人が入ってくる
机の上にテキパキと料理を並べるその人たちは廊下で拓真さんに声をかけてきたような人とは違ってちゃんと仕事をこなしていく
と思ったんだけど
「……」
「……」
視線は料理を眺めていた拓真さんの方をチラチラと気にしている
キリ、と胸の痛みが増した気がした
仲居さん達が部屋から居なくなると拓真さんは俺のところへやって来て
「用意出来たぞ」
と声を掛け、背中を支えて起こしてくれた
机の前に座ると、目の前にはやたらと豪華な食事
「うわ、すごい……」
思わず漏れたその言葉に拓真さんが笑う
「食べられるものだけでいいからな」
「……うん」
俺の対面側に拓真さんが座って、晩御飯を食べ始めた
純和食って感じの食事は俺って日本人なんだなーと思えるぐらいじわっと身体に染みる
「美味しい」
「そうか。良かった」
拓真さんも満足できたみたいでにこにこ笑いながら食事をしている
結局さっきまで寝込んでた癖に俺はほとんどを食べ切って食事を終えた
