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泣かぬ鼠が身を焦がす

第34章 旅は道連れ


夢だ
これは夢だ


わかってるけど涙は出るし、拓真さんに縋り付く

でも縋り付いた手は拓真さんに解かれて、突き放された

路上に倒れた俺は、また昔の汚い鼠みたいで


いや、違う


俺は何にも変わってないのかも


俺は、今でも
汚い鼠のまんまなのかも


そう考えて、冷静だった頭も悲しみの波に流されそうになったところで


「純!!!」


拓真さんの声に起こされた

バッ、と勢いよく開いた目からは夢と同じぐらいの涙が出ていて、息も肩でしている


「拓真さ、ん……?」


それに喉も、痛い


「すごい魘されてたぞ。大丈夫……じゃ、ないよな」


拓真さんは俺の様子を見て自分の胸に俺の顔を押し付けた


これ、俺が安心するってわかっててやってくれてんのかな


俺は有難く拓真さんにしがみ付きながら深く息をした

鼻が詰まってなかったのは幸いで、拓真さんの匂いもちゃんと感じられる


「落ち着いて来たか?」
「……うん、ごめんね拓真さん」


見回してみればまだ外は真っ暗で、きっと夜中なのに俺が起こしちゃったんだろう


「何を言ってるんだ。謝ることなんてない」


拓真さんはそう言って俺の頭を撫でてくれる

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