
泣かぬ鼠が身を焦がす
第35章 秘事は
車に乗り込んで、昨日と同じ拓真さんの運転で出発する
暫く旅館から見えた海を見ながら海岸線を走った
「旅館から見る景色もすげー綺麗だったけど、こうやってドライブで見るのもやっぱりいいよね」
俺がそう声をかけると拓真さんは
「海好きなのか?」
と聞いてくる
好き?
海を?
「うーん……特別好きとかって考えたことなかったけど、嫌いじゃないよ。あんなビル群に囲まれてるところにいてたまにしか見れないから綺麗に見える、っていうのもあるかもしれないけど」
「確かにそうだな。会社からでは見れないしな」
俺の率直な意見に拓真さんが笑う
「拓真さんは? 海好き?」
そして俺が質問を返すと
「……」
拓真さんの表情が一瞬固まった気がした
「?」
「……どちらかと言うと、山の方が好きだな。緑に囲まれてる方がリラックスできる」
「そう、なんだ」
今の変な間はなんだったんだろう
「そろそろ休憩するか。もう少し行ったところに喫茶店があるんだ」
「こんな海沿いに? すごいね」
ここ来たことあるのかな?
昨日からそうだけど、別にカーナビとか使ってないし今も喫茶店の場所とか
