
泣かぬ鼠が身を焦がす
第35章 秘事は
拓真さんの知り合い、か
拓真さんもその女の人に挨拶を返している
知り合い?
でも、会社からは結構離れてるし
年齢も離れてるように見える、けど……
拓真さんと少し世間話をしたその人が俺たちのメニューを聞いて去ってから拓真さんに話しかけた
「知り合いのお店だったの?」
「あぁ。古くからの知り合いだ。とは言っても、客と店員の関係だが」
「へぇ?」
お客さんと店員の関係
でも古くからの知り合い?
ってことは、昔から拓真さんはこのお店に通ってたってこと?
海より山派だって言ってたのに
なんか理由があったのかな
雰囲気的に聞くに聞けないまま、さっきの女の人が注文した飲み物を持って来てくれた
「これ、サービスね」
「!」
「ありがとうございます」
「あ、ありがとうございます!」
飲み物だけを頼んだはずがショートケーキをサービスで置いていってくれた
本当に結構仲のいい知り合いだったのかな
俺常連の店なんてヒトミさんのとこぐらいだからこういうのわかんないや
「遠慮せずに食え」
拓真さんにそう言われて俺はフォークを伸ばす
「! 美味しい!」
「そうか。良かったな」
