
泣かぬ鼠が身を焦がす
第35章 秘事は
涙が流れては石段に落ちて、俺の真下の石の色が変わっていく
「だがどんなに時間が経っても母は俺を責め続けていて、結局……仕事を理由に俺は墓参りに来ることすらなくなった」
小さな声で拓真さんが「逃げたんだ」と呟いた
拓真さんが、こんなに弱々しく小さく見えたのは初めてかもしれないと思った
これまでも何回か数える程度だけど、こういう風に拓真さんが弱ってることはあった
けど、今回は今まで1番
それはそうか
何にも言わなくなった俺を拓真さんが顔上げて見て、少し疲れた風に笑った
「どうして純が泣いてるんだ」
そして拓真さんが俺を引き寄せて抱きしめてくれる
「何にも知らなくて、ごめんね」
「話してなかったんだから、知らないのも当然だろう」
俺の頭と背中を拓真さんがゆっくり摩ってくれた
「……」
「……」
暫く沈黙が流れた後、俺は言葉を選びながら話しかけた
「拓真さんはお墓参りに来なくなったこと、逃げたって言ってたけど……悪いことだって思ってる……?」
俺の質問に拓真さんは考えるような間を開けてから答えてくれる
「……そうだな。今でも、ちゃんと時間を取れば良かったと思っているな」
