
泣かぬ鼠が身を焦がす
第35章 秘事は
拓真さんが俺を抱きしめる腕を強くした
手が俺の顔へ伸びて来て、目元を優しく拭われる
「死んじゃった人は、お墓になんていないよ。お墓は、その人の家族が拠り所を求めて作る物だから」
お墓を見ながら語る俺に吊られて拓真さんも同じ方を見た
魂ってものが本当にこの世に存在するとしても、きっとここにいたりしない
拓真さんのお母さんなら、絶対拓真さんの側にいつもいるよ
俺がそうなったら、同じようにするだろうから
まぁ、拓真さんのお母さんと同じ、なんて俺が言うのは図々しいけどね
「だから、余計なことに時間を使わないで。俺のことなんか忘れちゃってもいいから早く幸せになったところを見せて、安心させてって思う」
話し疲れて拓真さんの胸に頭を預けると、俺の髪に額をつけるように拓真さんが頭をコツン、と当てて来た
「拓真さんのお母さんなら、俺よりもっとそう思ってるよ。絶対に」
俺は拓真さんの足枷になんかなりたくないもん
自分が側にいられないなら、側にいてくれる別の人を探して欲しいよ
死ぬほど嫌だけど、俺のために拓真さんを1人になんてしたくない
ずっと黙って俺の話を聞いてくれていた拓真さんが
「……そうかもしれないな」
と呟いた
