
泣かぬ鼠が身を焦がす
第35章 秘事は
拓真さんの言葉に、びっくりして顔を上げる
「忘れる、って……いいの?」
俺がそう聞くと、拓真さんは穏やかに笑った
「あぁ。俺には純がいるから、母さんには新しい人生で幸せになって貰いたい。今まで苦労した分、多くな」
そっ……か……
また俺は頭の中で自分に置き換えて考えてみて、なんとなく納得
確かに俺でもそう思うかも
死んでまで自分に縛っていたくない
俺は自分が拓真さんを幸せに出来ないなら、例え他人でもいいから拓真さんを幸せにしてほしいって思う
なるほど
新しい自分を発見したところで、俺は拓真さんのお母さんに向き直る
「俺、間宮純って言います! 今はまだ頼りなくても拓真さんのこと、ちゃんと幸せにします……守ります!! だから、安心して任せて下さい!」
さっきはお墓に本人はいないとか言っといてこんな風に語りかけるのはおかしいけど
神様が拓真さんのお母さんにちゃんと届けてくれたらいいなと思う
ううん
きっと、拓真さんのお母さんなら拓真さんの言うことなんか当然のように聞いてくれてるよね
「あ……」
「どうした?」
