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泣かぬ鼠が身を焦がす

第35章 秘事は


突然声をあげた俺を拓真さんが少し驚いたような顔で見る


「ううん、なんでもない」
「?」


拓真さんの不審そうな顔
ほんとに大したことないから!

ただ、さっき神社をお参りした時のお願い変えて貰いたいなって思っただけ


さっき言ったのじゃなくて

俺は拓真さんのお母さんに「この人なら大丈夫」って安心して貰えるような大人にちゃんとなるから、見守っていて下さいって


んー……やっぱり後出しはダメかな

いや、願い事を見守るだけの神様なんだから俺の努力の変更ぐらい認めてくれる……はず!


「純、行こう」


俺が考え事をしていたら、拓真さんが石段に足をかけながら俺を呼んだ


「うん。もういいの?」
「あぁ」


返事をした拓真さんの顔はここにくる前よりずっと穏やかで、晴れやか


良かった
お母さんパワーかな


俺は最後に1度だけ振り返って拓真さんのお母さんのお墓を見た


さようなら
また拓真さん連れてきますね


「純、余所見してて階段から転げ落ちるなよ」
「そしたら前歩いてる拓真さんも道連れだね」
「流石にここじゃ足の踏ん張りもきかないし、そうかもな」
「嘘だよ。転げ落ちたら拓真さんの横をするっと落ちてくから」
「そしたら俺は純の服を掴んで助けてやる」
「それ結局拓真さんも転げ落ちちゃうじゃん」
「そうだな。だから気をつけろよ」


俺たちはそんなくだらない話をしながら神社を後にした

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