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泣かぬ鼠が身を焦がす

第36章 一生添うとは


夕日も沈んで暗くなった道を車で走りながら拓真さんに話しかける


「もう大分暗くなっちゃったね」
「そうだな」


拓真さんから返ってくる返事はやっぱり来るときよりも少し明るくて、何かが吹っ切れたみたいに見える


よかった


「もうこのまま旅館に戻るの?」


荷物は全部今朝の部屋に置いたまんまだから同じ宿に連泊なのはわかるんだけど、どこか寄り道したりしないのかなって意味で聞いてみる


「あぁ。目的は済んだしな」
「そっか」


俺は真っ暗になってあんまりよく見えなくなった海を眺めながら、移動時間を過ごした


昨日から泊まっている旅館に戻ってきて、フロントには寄らず部屋に直行する


「うわーー!!! 疲れた!!!」


畳の敷いてある部屋にごろん、と寝っ転がるとい草のいい匂いがした


んぁーー
昨日よりも気持ちも身体もすっきりしてて、畳がめっちゃ気持ちいいー

やっぱり旅館と言ったら最近珍しくなってきた和室だよなー

あとは


「温泉……」


そう呟くと、俺と違って上着を部屋のハンガーにかけていた拓真さんが俺を見て笑った


「それなら寝転がっていないで支度をしろ。風呂に行くぞ」

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