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泣かぬ鼠が身を焦がす

第36章 一生添うとは


そして掛け湯もして貰ってから湯船に浸からされた


「……」
「……」


疲れ切ってる俺に会話の相手を求めてない拓真さんは特に話しかけてくることはない

けど俺は逆になんか話さないとすぐにでも寝てしまいそうで


「波の音、聞こえるね」


と話しかけた


「あぁ、そうだな」
「……そーいえば拓真さんは海嫌いなんだっけ」


って、あ
俺のばか

あの時拓真さんが妙に間をとった話し方したんだから、言いたくないことかもしれないのに


回らない頭を頑張って回して別の話題に上手くすり替えようとしていると、後ろから俺を抱き締めてた拓真さんが優しく俺の肩にお湯をかけながら


「……好きではなかったな。今日までは」


と答えてくれた


聞いてもいいのかな


「なんで今日まで、なの?」


日が沈んで静まり返ったところに、微かな波の音と拓真さんの落ち着いた声が響く


「今までは、母さんの墓が海沿いにあったことで怖かったんだ。近づくと、母さんに責められてるような気がしていた」
「……」


拓真さんにとってのお母さんは本当に大きな存在だったんだな

いや、みんなそうか

よっぽどの事がなければ、母は偉大なり、だよね

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