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泣かぬ鼠が身を焦がす

第36章 一生添うとは


「だが……」


そう言って拓真さんは1度無言になった

しんとした空間に波の音だけが響いて、少ししてから


「悪くないな」


と言われる


嬉しいな

別に俺が何をしてってわけでもないんだけど、拓真さんが海のこと嫌いじゃなくなって
自分のことみたいに嬉しい


「だよね。俺も、波の音だけ収録されてるCD買いたいって思ったことあるぐらい好きだよ」
「そんなものがあるのか?」


お? 知らないの?
珍しく拓真さんより俺の方が物知りだ


「あるよ。フィーリング音楽、だったかな? 鳥の囀りだけが収録されてたりするのもあるんだよ」


俺がそう言うと拓真さんから感心したような反応が返って来る

その後、そもそもお風呂に入るのが2度目だった俺たちは軽く汗を流しただけでお風呂から上がって布団に戻った

ベタベタになったシーツとは逆の布団に拓真さんが俺を下ろして、枕に顔を埋める


「ふーー……気持ちよかった。やっぱり温泉っていいね」
「そうだな」


拓真さんも同じ布団の俺の隣に入って来た

少し空いた2人の隙間をぽんぽん、と布団を叩いて俺を呼ぶことで埋めさせる


せっかくの広い部屋
なのに俺たちがいるのは布団1枚分の面積だけ

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