
泣かぬ鼠が身を焦がす
第36章 一生添うとは
それからまた他愛もない話をしながら車の外を流れる景色を眺めていると、ちょっとした拓真さんの違和感に気がついた
なんか、ちょっとだけ拓真さんが変
会話の返事がなんていうか、軽い?
いや違うな
うーん……適当ってほどじゃないんだけど……
あ、上の空? な感じ
けど俺が勝手にそう思っただけで拓真さんに「どうしたの?」とは聞けず、そのまま会話を続けた
車はだんだん海岸線から離れて、今度は森の中へ
「海の次は山なの?」
「……あぁ、そうだな」
やっぱり、ちょっと変
他人事みたいな言い方なんて、滅多にしないのに
なんかあったのかな
そのまま上の空になってる拓真さんとの会話は徐々に減っていって、会話もなくなって少ししてから車が止まった
山の中に突然現れたちょっとだけ大きめの駐車場
「こっちだ」
車を降りてから拓真さんに案内されてついて行くと、煉瓦造りの可愛い建物があった
結構デカイ
なんか見た目だけで言うと童話に出てきそうな建物
お菓子の家とか
古いんじゃなくて、そんな風に見えるようにおしゃれに作った感じ
拓真さんはその建物の中に平然と入って行く
