
泣かぬ鼠が身を焦がす
第36章 一生添うとは
すると拓真さんが不意に身体を離した
「もう1つ、純にプレゼントがあるんだ」
「え……もう1つ?」
これ以上なんかあんの?
つーか指輪の他に渡すものってなに
そう思っていると、俺の背中に回っていた手にいつの間にかそれがあった
「小説……?」
「いや、中身は何も書いてない。ただのノートだ」
ノート……
ハードカバーの小説のような見た目でアンティーク調のその本には、何故か金具がついている
そしてその金具には小さな南京錠のような鍵がついていて、本が開かないようになっていた
「鍵、ついてるけど」
俺がその本を受け取りながら言うと、拓真さんはさも当然のように「そうだな」と頷いた
「そのノートは、所謂純専用の目安箱だ」
「目安箱……」
拓真さんの言葉を反芻して、頭の中でその単語を検索する
目安箱って確か意見とかを聞く投書用の箱……だっけ?
でもあれって国とかがやるやつだよな?
俺専用ってなに
すると本を見たままだった俺の視線を上げさせるように拓真さんが俺の頬を手で撫でた
目が合うと優しく微笑まれる
「純は1人で思い悩むことが多すぎる。だから、口で言いにくいことをここに書いておいて欲しい」
