
泣かぬ鼠が身を焦がす
第36章 一生添うとは
俺がいい返事を拓真さんに返すと、拓真さんがノートに簡易的にくっつけられていた鍵の1本を俺に渡してくる
「これは純の分な」
「ありがとう。……でも、どこに付けようかな」
俺キーケースとか持ってないし、鍵を持ち歩いたりしないで置いといたりしたら無意味だし
受け取った可愛い見た目の鍵を眺めてると、拓真さんがもう1度手を差し出してきた
そこに置いてあったのはシルバーに輝く……紐?
「これに通しておくというのはどうだ?」
受け取ってみると、拓真さんが持っていたのはネックレス用に使うような細いチェーンだった
「貰っていいの?」
「あぁ」
鍵についていた本来はキーケースに付ける用らしい金具に通して首につけようと……する、けど
つ、つかない
「貸せ」
苦戦する俺を拓真さんが笑って、俺に代わって付けてくれた
小さな音を立てるネックレスのチェーンは、どこか擽ったい
それを1人で笑っていると拓真さんに
「どうしたんだ?」
と言われてしまった
「ふふ、んー……なんか、俺こういうの付けたことなかったから、擽ったい」
正直に俺がそう言うと、拓真さんがまた笑う
「俺もだ。でも、新しいことに慣れて行くのも楽しいだろう?」
「うん……」
返事を返してから考えて
「そうだね!」
俺は改めて大きく頷いた
